西陣爪掻本つづれ掛軸『翁』
能楽「翁」解説
「翁」は、「能にして能にあらず」といわれるように通常の能楽とは異なり、これといった筋書きはなく呪術的で単調な舞ですが、能の源流となった申楽のそもそもの形を今に伝えているものが「翁」で、悠久の時をまたいで発展してきた能楽の原点となっています。翁がまとっている装束は、「翁烏帽子」・「翁狩衣」・「指貫」で、狩衣は、蜀江文様と決まっており他に例は無く、内には亀甲文様の厚板を着用しており、吉祥に満ちた意匠が多く装束からみても祝言性の高さが伺えます。今日の「翁」は正月や祝賀や記念能の冒頭で演じられ、特別な祝いの場で見ることが出来る。老体の神が祝福をもたらすという民俗信仰から子孫繁栄・天下泰平・国土安穏・五穀豊穣を祈念します。 また、「翁」は農耕との深い繋がりがあり、農村で生活していた庶民の風景を彷彿させる要素もあります。「翁」は、日本の伝統芸能の舞で、奈良・豆比古神社の翁舞と車大歳神社の翁舞は重要無形民俗文化財に指定されています。